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アメリカぷるぷるアート観光 Altruart in America

ニューヨークより心が震えるアートの紹介。障害とアート/アウトサイダーアート/アールブリュット/現代アート/NPO団体/アートフェア/美術館/おもしろグッズ etc.

影をとどめて-アメリカの死後肖像画/写真の展覧会 at アメリカン・フォーク・アート・ミュージアム

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1800年代に流行した死後肖像画と死後記念写真

失った最愛の人の姿をいつまでも忘れずにとどめて置きたい・・・。そんな欲求を満たすように欧米で一時期流行したのが「死後記念写真(ポストモーテム・フォトグラフィー)」や「死後肖像画」でした。

戦争や飢饉、コレラなどの流行病によって多くの若者が亡くなった1800年代に、ダゲレオタイプという銀版写真が発明されました。家族や恋人を亡くした人々が、故人をベッドに横たえ、時には目を開かせ、できるだけ生前の状態と同じような装いと表情までつけて記念写真を撮影をしたのです。

肖像画の場合は、死後肖像画専門の絵描きを雇い、時には死後記念写真のように故人にモデルをさせて絵画を制作しました。今では行われない風習ですが、当時の欧米では珍しいことではありませんでした。

そんな死後肖像画と死後写真の展覧会「Securing the Shadow」が、現在アメリカン・フォーク・アート・ミュージアム (American Folk Art Museum) で開催されています。展覧会のタイトルを日本語にすると「影をとどめよ」。

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http://folkartmuseum.org/

※追記(10/23/2016)蒐集家のいきうめさんからのシェア。

 

ご参考:過去に取り上げたフォーク・アート・ミュージアムの記事
さよならフォークアートミュージアム (Folk Art Museum)
ビル・トレイラー展 アメリカン・フォーク・アート・ミュージアム

※アメリカのギャラリーや美術館では基本的に写真撮影可能ですが、この美術館は撮影禁止ですのでご注意ください。

死後肖像画に散りばめられた死のシンボル

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Attributed to Samuel S. Miller (1807–1853) , Picking Flowers, probably New England, 1840–1850, Oil on canvas, 44-12 x 27-1/2 inches, Fenimore Art Museum, Cooperstown, Gift of Stephen C. Clark (N0255.1961), Photo by Richard Walker

朝焼けの中、お花の入った籠を持つ少女が佇んでいます。朝に咲いて夕に萎むこの花は、少女に迫る死を示唆しています。右手で花を摘んでいますが、この「育ったバラの茂みから花を摘む」という行為が絵に描かれるのは「若い生命がもうすぐ終わってしまうこと」を表す代表的な例でもあります。さらに左足で花を踏みつけていたり、ネコの目に愁いがあったり、この絵のあらゆるところに死のシンボルが配置されています。

 

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Joseph Goodhue Chandler, American (1813–1884), Portrait Of Frederick Eugene Bennett, August 19, 1849 and Portrait of Mary Elizabeth Bennett, Age 2, March 18, 1852, Oil on canvas, Gift of Edgar W. and Bernice Chrysler Garbisch, 1981.22-23

この2作品はつがいで制作された兄と妹の肖像画。フレデリック(左)は2歳になる前に、メアリー(右)もまた2歳で亡くなり、その後肖像画が描かれました。この兄妹は互いに会うことなく他界した為、こうして肖像画で並べられた時に初めて2人が出会えたのだそうです。

この他に展示されている肖像画は全体的に統一された雰囲気がありつつも、詳細はバラエティに富んでいます。

・亡くなった赤ん坊をその兄弟たちと並べてモデルにして1枚の絵に描かれている
・赤ん坊が亡くなった数年後、赤ん坊の姿は死んだ当時のまま、育った兄妹たちと一緒に描かれている
・昔亡くなった赤ん坊が「成長したらこうだったであろう姿」が描かれたもの(顔は赤ん坊のままなので、とてもアンバランス)
・その子の生前の肖像と死後の肖像が並べて展示されている

など。どれも事象としては読んでいるだけで気が滅入って来るかもしれませんが、一見する限り、作品自体はそれほど暗い印象を観覧者に与えるわけではありません。ただよく見ると「死のにおい」を感じ取れる独特の空気に溢れています。この雰囲気が堪らないという、一定層のファンも少なくありません。シュルレアリスム、アウトサイダー・アート、アールブリュットの好きな方には特に注目される作品群です。

 

ところで私が会場をまわっている間、その日のイベントとして会場内でギターの弾き語りライブが行われていました。ハツラツとした女性がエネルギー溢れる歌をフレッシュに披露していたのですが、その彼女の背景に飾られているアートが
 

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Charles Willson Peale (1741–1827), Rachel Weeping, 1772, enlarged 1776; retouched 1818, Philadelphia
Oil on canvas, 36-13/16 x 32-1/16 inches, Collection Philadelphia Museum of Art, Gift of The Barra Foundation, Inc. (1977, 1977.34.1), Photograph and Digital Image © Philadelphia Museum of Art

ああシュール、シュール過ぎでした。

 

マニアックな図録が並ぶ、憩いのミュージアムショップ

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会場の写真が撮影できないので、せめてミュージアムショップで販売されている図録を撮影しました。

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現在黒澤清監督の「ダゲレオタイプの女」という映画が公開されていますね。興味の在る方には、銀板写真とはどういったものか見られるのではないでしょうか。モデルは1時間程同じポーズを保っていなければいけません。出来上がりは、表面がガラスのプレパラートに銀メッキを吹きかけたような質感で、その表層の奥の方に白黒の写真が焼き付けられています。

 


黒沢清監督作品/映画『ダゲレオタイプの女』予告編

 

それにしても、遺族が遺品として作成したこの死後肖像画。その「残された遺族」が亡くなった後も、現在まで残っていることの不思議よ。

もしかすると、死後記念作品を制作した遺族が亡くなったことで、作品中の故人への遺恨がなくなり「純粋な芸術作品」に昇華したのかもしれません。

 

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