ネック・チャンド Nek Chand (1924 - 2015 )@Rubin Musium of Art
日本でアートは、売れないからねえ。
1万回くらい聞いたことのある、このセリフ。
そこから生まれた発想の着地点として「もっと一般の人がアートを買うようになればいいのに。」ということで、大衆へアートを広める活動が始まったりします。それはとてもいい試みだと思いますが、それと同時に、私個人的には、日本の富裕層がもっと日本のアートシーン(※追記、主にインフラ)にお金を使えばいいのに、と特にニューヨークに来てから思うようになっています。
ルービン・ミュージアムでヒマラヤンアート鑑賞
そんな思いを助長したのが、アメリカでも有数のヒマラヤンアートを鑑賞できるミュージアム「ルービン・ミュージアム・オブ・アート(Rubin Museum of Art)」。
ここでは、ヒマラヤンアートを中心とした1000点を超えるコレクションとオリジナリティに溢れた企画展・プログラムを楽しむことができます。このビルはもともと高級百貨店のバーニーズニューヨークが店を構えていて、1998年にドナルド&シェリー・ルービン夫妻が20億円で購入して改装しました。
ちなみに今回この美術館を訪れたのは、冒頭の写真に写っているネック・チャンドの作品を見る為。ネック・チャンドはアウトサイダーアートの中でも有名な作家の1人。
インドのチャンディーガル空港が、ネック・チャンド空港という名前に改名するかどうかの話題が昔あったのですが、不採用だったようですね。日本でいうと「山下清空港」みたいな空港ができる感じなので、私は震えて喜んでいたのですが。
偶然から始まった、アートへの支援
ドナルドさんと妻のシェリーさんは、もとより裕福だったわけでも、アートが特に好きだったわけでもなく、彼らとヒマラヤンアートの出会いは、偶然。
最初の出会いはたまたまふらりと入ったギャラリーで購入したヒマラヤの仏教画「White Tara」でした。それまで、当時のドナルドさんは仏教への知見もなく、そもそもヒマラヤがどこにあるかを地図で指差すことすらできなかったのだそうです。
それから30数年、医療分野のビジネスで大成功を収めたルービン夫妻は、その多大なる資産をアート支援へ向け、その内の大きなプロジェクトとして、この美術館を作りました。
ところでこの美術館はいつ行ってもとても空いていて、どんなドネーションで成り立っているのだろうと思ったのですが、サイトのアニュアルレポートを読むと2014年は寄付金総額が約24億円あったようですね。運営、、、できるはずです。
http://rubinmuseum.org/page/donald-rubin
有名美術館を避け、ニューヨーク全体のシーンを考え寄付先を選ぶルービン夫妻とその名言
ルービン夫妻は2013年3月にニューヨークのブロンクスミュージアムに5000万円、5月にクイーンズミュージアムに5000万円、そして同年の9月にクイーンズにある彫刻公園に約3000万円の寄付をしていることがニューヨークタイムズ紙で紹介されています。
同紙では、多くの大口寄付者がマンハッタンにある有名美術館や博物館へ集中することを挙げ(例えばアン・ジフ(Ann Ziff) さんが30億円をメトロポリタンオペラに寄付したり、ステファン・シュワルツ (Stephen A. Schwarzman) さんが100億円をニューヨーク公共図書館に寄付をしたりと話題は事欠かない)、それに対してこの夫妻はあえてマンハッタン外の美術関係団体へ寄付をしている点を伝えています。
ドナルドさんの言葉は痛快。
“I hate boards,” Mr. Rubin said. “I like to get things done at warp speed.”
ボードメンバーとか嫌いなんだよ、私はワープするようなスピードで物事を進めたい。
米ハフィントンポストの記者が紹介 しているドナルドさんの名言
About art: Art is the soul of mankind. A soul doesn’t require a resume. There is nothing to know about art, but only to feel and experience it.
アートについて:アートは人類の「魂」だ。魂というのはこれまでの概要などは必要ない。だからアートについてなど何も知らなくても良いのです。ただ感じて、経験して下さい。
About life: Don’t be afraid of falling. Fell down? — wash your hands and feet, punch your cheeks and keep going.人生について:落ちぶれることを恐れてはいけない。失敗して地に落ちてしまった?そしたら手と足を洗って、ほっぺたパンチして、続けよう。
染みます・・・・。
館内へ
美術館は有機的な螺旋階段が中心に、無料で拝観できる地下と7階まで展示品があります。
より施設内を伺い知ることができますので、興味の在る方は
こちらのサイトにある美しい写真群をどうぞ。
静かな館内を回る旅行者。
19世紀に制作されたグリーン・ターラ (Green Tara)。
色彩・流れるような線、美しいです。グリーン・ターラというのは、チベット仏教では悟りを開いた行動の神のこと。観世音菩薩の右目からでた涙がホワイト・ターラに、左目からでた涙がグリーン・ターラになったのだそうです。
緑の顔といえば、古代エジプト神話にでてくるオシリス神からディスニーのシュレックまで思い出しますが、神話では緑は植物の色であると同時に、再生復活を象徴する色。またサンスクリット語で円などの意味を示す「チャクラ」では、緑は心臓を表す色でもあります。興味深いですね。
神仏が手で表すジェスチャーの解説。あの独得の手の動きにも偶然は何一つなく、全てに意味が含まれています。
見事な仏像。この右手、上のジェスチャーに照らし合わせると、まさしく Granting wishes and blessing、希望と祝福を与える手の動作。
360度に展開された複製画。
その他にも映像を楽しむコーナーや、ヒマラヤ・チベットの仏教画、当時の4コマ漫画のようなものから、存分に楽しめます。また、2008年に起こったチベット自治区での騒乱のことも覚えている方は多いと思いますが、そんな事件のことも頭をかすめながら、ただ静かに自分と向き合いながら見てまわる、そんな美術館です。ここには1人でたまに来ています。
7階に、自分の「聖域」はどこですか?紙に書いて下さい というコーナーがありましたので、私も書いてみることにしました。
どこか冷たくて静かなところがいい、と思ったら、ふと「冷蔵庫」が頭に浮かんだのでそのまま素直に書いて入れました。
でも、家に帰って写真をみて気が付きました。
なんか変だなとは思ったのですが、
漢字・・・間違えてる・・・・・・涙。
さて、ミュージアムショップも素晴らしいこちらの美術館。是非足をお運び下さい。
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