アメリカぷるぷるアート観光 Altruart in America

ニューヨークより心が震えるアートの紹介。障害とアート/アウトサイダーアート/アールブリュット/現代アート/NPO団体/アートフェア/美術館/おもしろグッズ etc.

犯罪者のポートレイト ギャラリーの舞台裏 Bernarducci Meisel Gallery

Marina Press with PA Magazine at Bernarducci Meisel Gallery

ニューヨークのセントラル・パーク近くのエリアにある、ベルナルドゥッチ・メイセル・ギャラリー (Berunaruducci Meisel Gallery)  で、ロバート・ニューウェック(Robert Gniewek) さんによる「悪魔のポートレイト (Portraits of Evil) 」(2014年12月5日-2015年1月31日)  という犯罪者のポートレイトが展示されている・・・・という話を小耳に挟んだので、寒さに負けず行ってみました。

 お出迎えしていただいたのが、このギャラリーのアソシエイト・ディレクターのマリーナ・プレスさん (Marina Press) 。最近PAというアート雑誌のキュレーションしたのよ!と、雑誌を手にとろけるような笑顔。英語・スペイン語・ロシア語のトリリンガルで、この美しさで、一流ギャラリー勤務!という鬼に金棒みたいな女子です。しかも驚くほど優しいという無敵さで、見ていると視力が落ちるんじゃないかと思うほど眩しい人でした。




この展覧会では、アメリカで有名な犯罪者のポートレイトの作品が展示されています。写真に見えますが、これはマグショット等を模した油絵の作品。マグ・ショットというのは、犯罪者が警察に捕まった後に顔や身長等の特徴がわかるように撮影された写真のこと。よくアクション映画なんかにでてきますね。個人的には映画のユージュアル・サスペクツのジャケとか思い出します。


John by Robert Gniewek © 2013 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 60 x 40"

 


最初に目に留まったのはこの作品。ジョン・ウェイン・ゲイシー (John Way Gacy) を描いたもの 。ジョン・ウェイン・ゲイシーとは、アメリカで「史上最悪のシリアルキラー(猟奇殺人犯)」と呼ばれている犯罪者です。子どもたちを楽しませるためにパーティなどでピエロ(クラウン)に扮しチャリティーに熱心だったのですが、実は33名の少年に性的暴行を加え殺害していた事が判明し、死刑となりました。

余談ではありますが、このジョン・ウェイン・ゲイシーは
ピエロの絵をよく描いていて、それが今やコレクターが付くほどのレアものとなっていたりします。ちょっと信じられないかもしれませんが、アメリカには囚人・死刑囚などの描いた作品を扱うギャラリーやNPO団体が沢山あり、プリズンアート (Prison Art) なるジャンルもあるほどです。アートフェアにその団体の作品が出展されたりしています。そんな不謹慎な。。。という声もあるかもしれませんが、これもアメリカ。

さらに余談ですが、アメリカで昨年から大ヒットしているポッドキャストに「シリアル (Serial) 」というものがあります。
1999年に実際に起こったボルチモアの高校生による元彼女の殺害事件を題材とした推理もの番組で、なんとポッドキャスト史上最速で500万ダウンロード& ストリーミングを達成。中毒性のある内容にハマっている人激出のようです。

日本でも、囚人や死刑囚が描いた作品が
鞆の津ミュージアムなどで展示されたので、そういった作品を目にしたことのある方もおられるのではないでしょうか。



http://www.bernarduccimeisel.com/artist/index.php?aid=55

ところでこの「悪魔のポートレイト (Portraits of Evil)」というシリーズは、ロバートさんの普段のプロジェクトではありません。彼の本流はアメリカを描くこと。ミシガン州デトロイト生まれの彼は、ダイナーやバーの景色からタイムズ・スクエアなどのアメリカのシンボリックな街頭の景色を主に描いています。特にネオンが光り始める夕方から夜にかけてのノスタルジックな景色が多く、日本人にとっては古き良いアメリカのフィルムをみているような気分。

今回のポートレイトのシリーズ、切り口は違いますが、これもまさに「アメリカ」を捉えたものに他なりません。日本と比べて圧倒的に人口が多いこともあり、必然的に犯罪件数も多い国です。そのダークサイドを描くこともアートの使命なのかも。。。。光も影も、私達が積み上げたものの1つです。



Jared by Robert Gniewek © 2012 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 60 x 40"

アリゾナで約20人が死傷した銃乱射事件の犯人ジャレッド・ロフナー (Jared  Loughner)



OJ by Robert Gniewek © 2012 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 60 x 40"

アメリカで知らない者はいない、元アメリカン・フットボール選手で俳優でもあったOJ・シンプソン (O J Simpson) 。裁判も「人種差別・有名/無名な人の差別」など様々な要素をはらみ、現在も服役中・・・。


 


James by Robert Gniewek © 2012 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 60 x 40"

 

2012年にコロラド州で起きた、映画館内での銃乱射事件の犯人ジェームズ・イーガン・ホームズ( James Eagan Holmes) 。まだまだ記憶に新しい犯罪です。


 


Lee by Robert Gniewek © 2012 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 60 x 40"

 


アメリカ合衆国第35第大統領ジョン・F・ケネディの暗殺の実行犯とされている、リー・ハーヴェイ・オズワルド ( Lee Harvey Oswald) 。

これらの作品を前に色々思いを巡らせていたところ、マリーナさんが奥のVIPルームに連れて行ってくれました。この部屋はギャラリーの顧客など、頻繁に作品を買う方などの為に用意してあるお部屋で、中々普通お観光などでは見せてもらえるエリアではありません!ということで、ギャラリーの裏側もご紹介~。




ロバートさんのメインの作品が展示。ギャラリーらしいデザイナーズソファーもあって、なんだか得意客気分!このうちの1つが既に販売済みのようでした。価格は軽く、500万円代・・・・・。

 



奥に色々あるのよーと・・・

 


Big Kiss by Hurbert De Lartigue © 2012 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 79 x 79"

ディレクターさんの机。ギャラリーの一部みたいですね!ハバート・デ・ラルティグ (Hubert de Lartigue) さんの唇の作品がマッチしていてとってもオシャレです。後ろから「日本人の作品もあるわよ!」とマリーナさんの声が。

 




Ohkubi-e by Ken Matsuyama © 2009 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 4 x 4"

 

現代アーティスト、松山賢 (Ken Matsuyama) さんの作品。柔らかい美女の絵。マリーナさんにすごく似合っています。アジア人の作家は色々いるわよ~と、更に色々ご紹介してくださいました。



MJ Kim by Park Hyung Jin © 2013 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 76.25 x 51"

パーク・ヒュン・ジン (Park Hyung Jin) さんの作品。大きい作品は見栄えも良く、見応えありますね!

 


Beach 169 by Hilo Chen © 2012 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 24 x 30"

ビーチの太陽を感じるような、セクシーな油絵。ヒロ・チェン (Hilo Chen) さん。 台湾の作家さんのようです。


 


Beach 173 by Hilo Chen © 2012 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 30 x 40"


こちらもヒロ・チェンさん。たっぷり作品を見せて頂き、さーて帰ろうと思い背後に気配を感じたので振り返ると・・・・

 

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Classical Allusion by John Deandrea © 1987 Bernarducci Meisel Gallery, oil on linen 60 x 30 x 31"

ああ、本当に驚いた。ジョン・ディーンドゥレア (John Deandrea) さんの立体作品でした。本当に無造作においてあったので、一瞬汗びっしょりかきました。すごいぜアート。

ロバートさんの作品を見に行ったのですが、結果的にギャラリーツアーをさせていただくことができ、とっても素敵な時間となりました。観光でギャラリーに入るのって中々緊張することもあるかもしれませんが、気軽に回って見てくださいね~。