アメリカぷるぷるアート観光 Altruart in America

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【病院 × アートのコラボ】入院中の子供が楽しめるアート企画 in サン・フランシスコ

Amy Snyder © Exploratorium, All rights reserved

 

これはサン・フランシスコにあるエクスプロラトリウム(expl◯ratorium)という科学博物館と、UCSF ベニオフ小児病院 ( UCSF Benioff Children’s Hospital) のコラボレーション企画。先日、石黒敦彦さんがフェイスブックでシェアされていたのを見て、とてもいい記事だったのでご紹介です。

※石黒先生はサイエンス・アートの研究者で、著作も多く出版され、日本各地の芸術大学で講師をされています。現在多摩美術大学では石黒先生による福祉とアートマネジメント」講座が受講できるとか。
★訂正★(2015年3月15日)大学名は、武蔵野美術大学芸術文化学科で、正式な講座名は「アートセラピー/福祉とアートマネジメント」とのことです!大変失礼しました。
障害のあるアーティストを支援する施設が日本には沢山ありますが、そういった団体をマネジメントしていくための知見を、学芸員の卵たちに教えられているそうです。多摩美生ムサビ生、うらやまし!

エクスプロラトリウムは1969年にサン・フランシスコにオープンした、サイエンス・アート・人間の知覚に関わる様々な物を展示するとてもユニークな参加型・体験型の科学博物館です。サイトに行くとわかりますが、以下の様な単語(サイトからランダムに抽出してみました)にドキドキしたら、行って来い!です。

アート、天文学、宇宙探索、化学、色彩、文化、地球・海洋と大気、電気と磁力、エナジー、エンジニアリングとティンカリング、食物と料理、地質学、熱・気温・温度、人体解剖学、言語
、生命科学、光と視覚、数学、心理学、物質と運動、歴史、錯覚、音・聴覚、スポーツ科学、時間、水、波長、、、

これだけ並べりゃ人間8割ひっかかるだろと思うかもしれませんが、まさしくその通りで、
サン・フランシスコで最も人気のある施設の一つなのだとか。見てみて、この博物館内の写真。

 


©www.mccallssf.com

 


©www.monkeylikeshiny.blogspot.com

 

サン・フランシスコに移住したくなりましたよ。私は。

さあ・・・本題に戻します。この企画の目的は、入院患者さんに開放感と好奇心・それも幸せ(健康)に向かって「自ら体験しにいく学びの機会」を持ってもらうこと。エクスプロラトリウム側が用意するのは病室にラップトップサイズのモニター、病院内のロビーに設置する8メートル強のサイズのディスプレイボード等。病室内のモニターでは、子供がそこに絵を描いたり、ライトで遊んだり、ストップモーションアニメ(いわゆるクレイアニメ)が簡単に作れて、さらにその作品を友達・家族にシェアすることができます。孤独な時間を過ごす子供に、楽しみだけでなく学びも提供できる仕組みです。


Amy Snyder © Exploratorium, All rights reserved

投影された日常の物が虹色の影で楽しめる装置



Amy Snyder © Exploratorium, All rights reserved

身の回りにある「普通の物」が、顕微鏡を通してモニターに映される。
入院する子どもには見飽きた毛布やパジャマが、’全く別の魅力を持って目に映ることでしょう!



Amy Snyder © Exploratorium, All rights reserved

 

一方、ロビーに取り付けられたディスプレイボードには、サン・フランシスコ湾に面した低速度カメラの映像を通して外の世界を楽しむことができます。さらにディスプレイ上のノブを回すと、時間を遡った映像も楽しめます。子どもたちは病院内にいながら、行き交う船や変わりゆく天候を目にすることができるのです。

 


Amy Snyder © Exploratorium, All rights reserved

 

病室内とロビーだけではなく、子ども専用のエレベーターができたり、廊下に展示物ができたりと、入院中の子どもが精神的にハッピーな状態で過ごせるような仕組みが色々設置される予定。



Amy Snyder © Exploratorium, All rights reserved

こんなの病院にあったら楽しい気持ちになりますねー!



このプロジェクト、実は子どものためだけでなく、科学館と病院の双方にとっても大きな収穫があったようです。先進的といわれるこのエクスプロラトリウムにとっても、今回のような(特に「病院」という特殊な場)とのコラボは新しい取り組みだったので、プロトタイプとして実務レベルのノウハウが大きく積み上がったそう。病院特有の安全・衛生に関わる必要条件はとても厳しく、それをクリアしながら設置していくことは大きな課題だったとのこと。どんなことをするのにも一番時間をかけて乗り越えなくてはいけないのはこの部分だったりしますよね。

病院側としても、楽しむことをヘルスケアの現場に取り入れる姿勢を学び、これは今後世界中で新しい医療施設を作る際の意識・構造上のロールモデルになるだろうとのことです。

私的には、何もすることがない方が想像力は育つのかも、と思うこともありますが、こんな素晴らしい遊び道具ができれば、病院で苦しい体験をする子どもにとって、何かの光を見つけるチャンスになるのかもしれません。子どもにとって「病院は怖い」というイメージがなくなる日も近い…?

アートと他業種の組み合わせで広がる世界はまだまだありますね!